作曲者:グスターヴ・ホルスト(Gustav Holst, 1874–1934)
作曲年:1914年
※組曲「惑星」全体は1914~1916年に作曲され、「火星」はその最初に書かれた楽章です。
グスターヴ・ホルストの代表作、組曲「惑星」作品32は、1914年から1916年にかけて作曲された大管弦楽のための組曲です。「火星」はその第1曲で、「戦争をもたらす者(Mars, the Bringer of War)」という副題が付けられています。
ホルストは天文学的な惑星そのものを描いたのではなく、当時関心を持っていた占星術における惑星の性格やイメージを音楽で表現しました。「火星」では、戦争や暴力、緊張感を思わせる激しい音楽が展開されます。
特に印象的なのが、冒頭から繰り返される5拍子のリズムです。一定のリズムが執拗に刻まれ、その上に金管楽器や打楽器の力強い響きが重なっていきます。通常の行進曲とは異なる不安定なリズムによって、機械的で容赦のない戦争の姿が描かれているように感じられます。弦楽器が弓の木の部分で弦を叩く「コル・レーニョ」という奏法も、独特の緊張感を生み出しています。
「火星」は第一次世界大戦を連想させる作品として知られていますが、意外にもホルストがこの曲を書き始めたのは1914年、第一次世界大戦が始まる前でした。そのため、戦争を直接描いた音楽というより、ホルストが「火星」という惑星に結び付けた戦争や暴力のイメージを音楽化した作品と考えるのが適切です。
組曲「惑星」より 火星
巨大なオーケストラによる迫力ある響きと、執拗に繰り返されるリズムによって、聴く者に強烈な印象を与える「火星」。組曲「惑星」の幕開けにふさわしい、ホルストの独創性が際立つ名曲です。
組曲 惑星
1 「火星」戦いをもたらすもの2 「金星」平和をもたらすもの
3 「水星」翼のある使者
4 「木星」幸せもたらすもの
5 「土星」老いをもたらすもの
6 「天王星」魔術師
7 「海王星」神秘なるもの
またこの作品は惑星を題材としていますが、天文学ではなく占星術から着想を得たものであり、そのために地球は含まれていません。作曲者ホルストの名前は一般的には「組曲:惑星」の作曲者として知られているのみであり、この曲なくして彼の名が後世に残ることはなかったことでしょう。
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